【記事概要】
発達が気になる子どもには、偏食があるケースも少なくありません。「偏食があり、食べられるものが少なくて悩んでいる」という方も多いのではないでしょうか?極度の偏食のある息子が宿泊学習体験に参加出来たサポートについてお伝えします。
1.発達障害のある子に極度の偏食が多い理由
発達が気になるお子さんの中には、食べられるものが極端に少ない偏食がある場合が少なくありません。
発達障害の特性の中には、感覚の過敏や鈍麻、こだわりの強さというものがあり、そういった特性によって偏食になりやすい傾向があるといわれているのです。
・偏食があり、食べられるものが少ない
・調理法を工夫しても食べない
・決まった物しか食べない
・お菓子しか食べない
・必要な栄養がとれず心配
このような悩みを持たれているお母さんも多いのではないでしょうか?
発達障害があるお子さんの中には、感覚(五感と呼ばれる視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚)のはたらきに過度に偏りがみられる子がいます。
このような感覚の偏りは、特定の感覚・刺激を過剰に受け取ってしまう「感覚過敏」と、逆に感覚・刺激に対する反応がにぶくなる「感覚鈍麻」に分けられます。
感覚過敏の症状の中には、味覚に偏りがあり、特定の味に過剰に刺激を感じてしまう「味覚過敏」や、特定のにおいを過剰に受け取ってしまう「嗅覚過敏」というものがあります。
この感覚過敏と発達障害には密接な関係があり、特に自閉症スペクトラム障害(ASD)に多い特性であるといわれています。
2.食べられるものが少なくても、元気に生きていければOK
わが家には、自閉症スペクトラム(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)の特性を併せ持ったグレーゾーンの中学2年生の息子がいます。
息子には、極度の偏食があります。息子の味覚感覚は神レベル!
いつも使っているカレー粉ではないものを使ってカレーを作ると
「ママ、このカレーいつもと味が違うよ!」
と言って食べてはくれません。
いつも食べている缶詰のみかんを切らしてしまい、違うメーカーの缶詰のみかんを食事に出すと
「ママ、これいつものみかん?味が違う!」
と言って食べません。
食事の準備をするところを見ているわけではありません。正直、私には味や食感に大きな違いがあるかも分かりません。ですが息子は味の微妙な違いに気がついて食べられないのです。
なんとか食べさせようと、種から野菜を一緒に育ててみたり、一緒にお料理をしてみたり、細かく野菜を刻んでみたり、濃い味付けにしてみたり、一生懸命考えて思いつく限りの挑戦を繰り返しました。
それでもひとつも手をつけずに食べてくれない息子から食事を取り上げて「もう何も食べなくていい!」と叱りつけて作った食事をシンクにバーンと捨てて、自己嫌悪するなんてこともありました。
そんな私ですが、発達障害の特性が関係している可能性があることを知り、少しずつ柔軟に考えられるように気持ちが変化していきました。
こんな極度の偏食がある息子が人生初の宿泊体験学習へ参加することになりました。
心配ごとはやはり食事です。普段の息子は、学校給食があまり食べられなくても、帰宅後「おなかすいたー!」と言って夕食前に軽く食事をして空腹を満たしています。
ですが3泊4日も食べられるものがないかもしれない、と考えると不安でいっぱいのようでした。
初めての宿泊体験学習が成功体験となるようにしたい!と考えた私は、少しでも息子の不安感を減らせるようにサポートすることにしました。
3.何でもサポートできるママになろう!
まずは、学校へ連絡をして、事情を説明し、担任の先生と数回にわたり電話でのやり取りをさせて頂きました。
学校側は、偏食について理解をしてくださいました。どうしても食べられない場合には持ち込んだおかずを食べてもよいと認めてもらえたのです。
同じクラスの生徒さんにも、息子の事情を担任の先生から説明してくださり、理解を求めて下さいました。
その後、宿泊施設へも事情を説明し、息子が何も食べられるものがなかった場合には、ウチから郵送したものを出して頂くように対応して下さいました。
色々な方の協力のお蔭で息子は、3泊4日の宿泊体験学習に無事参加することが出来たのです。
宿泊体験学習に向けて相談したのですが、それは普段の給食でも適応して頂けることになりました。
また、災害時の自助バックに常備している非常食のカロリーメイト(チョコ味)もカロリーメイト(バニラ味)なら食べられる!と息子自身から担任の先生に交渉し、自分で購入したバニラ味のものと入れ替えをして頂きました。
1つ1つ食事面での不安を無くしていくことで、安心して過ごせるようになってきたようです。
「食育」とは、栄養をバランスよく与えることではなく、「食べる」ということを楽しいことだと感じられるようになる教育だと思います。
そう考えると、極度の偏食に苦しむ発達障害の子が、安心感を持って食事ができるようにすることも、立派な「食育」ではないでしょうか。
子どもの気持ちに寄りそう工夫を、ぜひ試してみてくださいね。
子育てに悩まれているお母さんの心の支えになれれば幸いです。
執筆者:中木村 美紀
(発達科学コミュニケーショントレーナー)