【記事概要】
中学校進学で感じる小学校との違いは、大きく分けると「学習面」と「生活面」の2つ。発達障害グレー男子が気を付けたいのは、「学習面」より「生活面」での変化です。生活面の「中1ギャップ」を乗り越える環境調整サポート術をご紹介します。
1.学習面より生活面の変化に要注意!
環境の変化が大きな中学進学は、おうちの方にとってもお子さまにとっても不安がつきものです。
お子さんの発達に凸凹がある場合は、さらに不安が募りますよね。
おうちの方にとって一番気になるのは、学習面のことかもしれません。
学習面については、中学進学前の早い段階で対策を考えているご家庭も多いと思います。
ですが、ASD(自閉症スペクトラム)タイプの「新しい環境が苦手」な子、ADHD(注意欠陥多動性障害)タイプの「不注意傾向」な子である発達障害グレー男子は、学習面よりも対策が手薄になりがちな生活面での「中1ギャップ」に注意が必要です。
2.中学進学後、週末の部活でつまずいた「中1ギャップ」
我が家の息子は、発達障害グレーゾーンで、ADHDとASDの特性を併せ持つタイプで不注意の特性があり、急な予定変更や新しい環境の変化にすぐに対応できない特性があります。
発達障害グレー男子の息子は、中学進学前から「中学生になったら、ハンドボール部に入る!そして、3年間部活を続ける!」と、宣言し楽しみにしていました。
入部後、しばらくの間、一年生の練習は平日の放課後のみ。
発達障害グレー男子の息子ですが、平日の放課後に行われる部活では、問題なく参加できていました。
ですが、週末の部活がスタートした途端、たび重なる失敗がキッカケで、あっという間に自信をなくし、ため息ばかりつくようになってしまったのです。
週末の部活は、放課後に行われる平日の部活とは違って
・日によって練習時間が変わる(午前中 or 午後)
・日によって持ち物が変わる(軽食持参、外履き or 体育館履きなど)
・試合がある日は、集合場所が変わる(駅集合など)
・天気によって予定が変更される(校庭練習から体育館練習へ変更など)
普段とはちがう対応が多いので、自分で部活掲示板を確認する必要があるのですが 、不注意の特性があり、急な予定変更や新しい環境の変化に対応することが苦手な息子は 、
・そもそも、部活掲示板を見て来る事を忘れる
・部活掲示板を見てきたけど、土曜日と日曜日を見間違えて持ち物を忘れる
・集合時間と練習開始時間を勘違いして遅刻をする
・試合の時だけ必要な試合用体温カードを忘れて試合に出られない
こんな失敗を繰り返し、その度に先生から厳しく指導されました。
すると「また、先生に怒られたらどうしよう」と部活をしている間、練習に集中するどころか、先生に怒られないようにするにはどうするか、ということで頭がいっぱいに。
練習に集中できていないので、また先生に怒られます。
その繰り返しで、「怒られないように、がんばっているのに、オレばっかり怒られる」と泣いてしまうこともありました。
その時の息子が感じていた負担がどれほどだったかというと、家に帰宅した時、玄関に倒れこみ、ぐったりと動けなくなるほどでした。
家で過ごす時間は、いつもイライラして弟たちに命令したり、暴言をはいたり、弟たちの大切にしている物を乱暴に扱ったりして、不機嫌な態度をとることが増えていきました。
そして、ついに「部活をやめたい」「部活があるから学校に行きたくない」と登校渋りをするようになってしまいました。
困りごとを本人の努力だけで解決するにはハードルが高く、二次障害に繋がる可能性があると感じた私は、環境を整えるサポートをすることにしました。
どのように、環境調整のサポートに取り組んだのかを次にお伝えします。
3.発達障害グレー男子が「自信とやる気」を取り戻した環境調整のサポート術
「失敗を減らす工夫を一緒に考えよう!」と息子に提案しました。
息子が自分の苦手なことが何なのか、整理できるように
「部活掲示板は忘れずチェックできたけど、失敗することがあったよね?」
「どんな方法だったら失敗しなかったと思う?」
と、実際にあった場面を思い出す声かけをしながら一緒に考えました。
息子が考え出した失敗を減らすための工夫は、
・部活掲示板を見る事を思い出せるように手首に輪ゴムをつける
・仲の良い友だちに声をかけてもらって一緒に部活掲示板を見て週末の確認をする
・仲の良い友だちと一緒に部活に行く(行く時に持ち物を確認する)
この3つでした。
どれも、忘れっぽさや確認ミスをカバーできる方法です。
私は、息子が考えた方法を否定せずに「やってみよう!」と寄り添い応援することにしました。
自分なりに工夫をしたり、友だちにお願いして協力してもらうことで、大きな失敗がなくなりました。
自分で考えて工夫したら「うまくできた」という成功体験を繰り返し経験することで、自信へと繋がったようでした。
自信が持てるようになると、やる気も回復していき「部活、もう少しがんばってみる」と前向きな発言をするように少しずつ変わっていきました。
苦手なことを完璧に克服することは難しいかもしれませんが、意識を変えたり、工夫したり、時には協力してくれる誰かの力を借りることによって、失敗を減らすことはできます。
中学校に進学したばかりの発達障害グレー男子は、環境調整のサポートが必要な場面が沢山あります。
お子さんの困りごとを良く観察し、環境を整えるサポートをしてあげることで、お子さんの成功体験を増やしてあげましょう。
発達が加速する環境が整うと、子どもは必ず「自信とやる気」を取り戻しますよ!
子育てに悩まれているお母さんの心の支えになれれば幸いです。
執筆者:中木村 美紀
(発達科学コミュニケーショントレーナー)